1960年代初頭、「サリドマイド」という薬が世界中で睡眠薬や鎮痛薬として処方されていました。特に妊娠中の「つわり」軽減の目的で使用されましたが、多くの胎児に重篤な四肢奇形を引き起こし、最終的に販売が中止されました。

サリドマイドの分子構造には「*」の記載があり、四つの異なる置換基を持つことから、サリドマイドはS体とR体の光学(鏡像)異性体を持つことがわかります。研究により、S体(左手型)が催奇性を持ち、R体(右手型)は鎮静催眠作用に関与することが報告されています。

サリドマイド

この立体構造の違いによる生理活性の差異が当時理解されていれば、サリドマイドの薬害を抑えることができた可能性があります。立体構造の重要性を学ぶ意義を改めて強く認識させられます。

現在では、体内においてR体がS体へと相互転換することが明らかになっており、R体であっても弱いながら催奇形性を引き起こす可能性があることが判明しています。

本単元「立体化学/ 有機化合物と金属錯体」は【動画と分子模型でわかる基礎化学】にて掲載しています。文章での理解が得意な方は,ぜひ本書を手に取ってください。また,立体化学は実際に分子模型を使って,多角的に考えたほうが理解が速いです。

丸善出版社の「HGS分子模型」もぜひともご利用ください。

▼ 【錯体化学】のページと併用して学んでください。

破線ーくさび型表記法と立体化学の概要

表記法と鏡像異性体
RS表示とCA表示

立体配置異性体 と トランス効果による反応性

シスとトランス (E体とZ体)
トランス効果

鏡像異性体

軸不斉/ Axial Chirality
面不斉/ Planar Chirality
らせん不斉/ Helical Chirality
ジアステレオマーとメソ化合物/ Diastereomers and Meso Compounds

立体配座異性体

ニューマン投影図/ Newman Projection
フィッシャーとハース投影図/ Fischer and Haworth Projection